こんにちは。静岡市葵区呉服町の矯正歯科、ブライフ矯正歯科・院長の平塚です。
前回は叢生(そうせい、ガタガタのこと)の方の小児矯正について解説しました。(ガタガタの方の小児矯正についてはこちら)
今回は、叢生の方の成人矯正について解説したいと思います。
小児矯正と成人矯正では、治療内容が大きく異なります。その理由は、小児矯正では顎の骨の成長があり永久歯が生え揃っておらず、一方で成人矯正では顎の骨の成長が終了し永久歯が生えそろっている、という点にあります。
成人矯正は、名前は「成人」となっていますが、歯並びが成人と同様になる13歳頃以降に行う治療です。
小児矯正と違い、叢生の原因が骨格にあったとしても(顎の骨が小さいことが原因で叢生になっている場合)、顎の成長が終了しているため顎を大きくすることでガタガタを解消することができません。
ポイントはいかにして歯を並べるための隙間を確保するかです。
▽関連ブログ→矯正治療をする上で、不足したスペース(隙間)を確保する方法!
抜歯が必要かどうか
叢生の程度が重度であった場合は、小臼歯と呼ばれる歯を左右1本ずつ抜歯する必要がある場合が多いかと思います。
上下の歯並びが共に叢生の場合は、上下で抜歯が必要になりますので、合計で4本の抜歯が必要になります。
上の写真の患者様の場合ですと、上下の歯並びに重度の叢生がありましたので、上下左右の小臼歯を1本ずつ、合計で4本抜歯しております。
もし、下顎にほぼ叢生がなく、上顎だけが上の写真のように八重歯であった場合、上顎の小臼歯のみを抜歯することになりますので、2本の抜歯で済むこともあります。
一方で、叢生の程度が軽度〜中等度である場合には、抜歯を回避できる可能性があります。
抜歯せずに叢生を治すには
抜歯をしない代わりに、他の方法で歯を並べるだけのスペースを確保する必要があります。
主に3つの方法があり、それらを組み合わせてスペースを確保します。
1.IPR(歯と歯の間をわずかに削る処置)を行う
歯と歯の間を0.5mm程度削る方法で、それを複数箇所行うことで合計で数mm程度の隙間を確保することができます。
歯を削ることに抵抗がある方もいらっしゃるかと思いますが、削る量は歯と歯の間で0.5mmとすると、1本あたりは0.25mmですので全く問題ない範囲です。
術中、術後ともにしみたりといった症状は出ませんのでご安心ください。
▽関連ブログ→IPR(Interproximal Enamel Reduction)とは?
2.歯並びの横幅を広げる
歯並びの横幅が狭いことによって叢生が生じてしまうことがよくあります。
こちらは下顎のスキャン画像なのですが、前歯の部分の歯並びが非常に狭くなっており、「V字」の歯並びになっております。
理想的な歯並びの形態は「放物線形」ですので、この方の場合ですと前歯部分の歯並びの横幅を拡大してあげる必要があり、結果的に歯が並ぶスペースが獲得されますので非抜歯での排列が可能となります。
また、すでに放物線形の理想的な歯並びの形態の方であっても、2mm程度であれば問題なく拡大することが可能です。
3.奥歯を後方に移動させる(遠心移動)
前歯の叢生の原因が奥歯のずれによって生じている場合は、奥歯を後方に動かしていくことで叢生を解消できる場合があります。 これを遠心移動と呼びます。
特に、インビザラインではこの治療が得意で、ワイヤー矯正の場合だと抜歯になってしまうようなケースでもインビザラインの場合は非抜歯で治せると言うことがよくあります。
こちらの画像は、遠心移動の例なのですが、上段が治療前、下段が治療後です。
上の奥歯の位置を注意深く見てください。治療の前後で上の奥歯が後方に移動しているのがわかると思います。
その結果前歯の部分の叢生が解消され、内側に入り込んでしまっていた歯が見えるようになっています。
ただし、この場合上顎に親知らずがある場合には親知らずを抜歯する必要があります。
また、これをワイヤー矯正で行う場合には、アンカースクリューと呼ばれるチタン製のネジを骨に埋入する必要がありますので、基本的にはインビザラインでの治療をおすすめします。
▽関連ブログ→困難な矯正治療も可能に!!〜歯科矯正用アンカースクリューとは?〜
まとめ
叢生の治療においては、抜歯の要否を必ず検討しなければなりません。
もちろん、「なるべく歯を抜きたくない」と言うのは我々も共通の認識ですので、まずは非抜歯での治療を検討します。
しかし、その上でどうしても抜歯が必要な場合には、しっかりと説明を受けて納得した上で治療に進まれるのが良いかと思います。
矯正を専門とする歯科医師であれば、医学的な根拠に基づいて抜歯・非抜歯を判断していますので、抜歯が必要な方というのは無理に非抜歯で治療を行うとむしろ噛み合わせが悪くなってしまいます。
世の中には、非抜歯での矯正を全面的に打ち出した歯科医院もあるようですが、すべての患者様を非抜歯で治せるなどという魔法は存在しませんし、抜歯を伴う矯正治療を行う腕がないため非抜歯での治療を行なっている場合がほとんどかと思います。
矯正治療を検討されている患者様は、治療を受ける医院選びに慎重になって頂きたいと思います。
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