矯正歯科治療は高額な費用がかかるため、医療費控除の対象になるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
結論として、矯正歯科治療の費用は医療費控除の対象になるケースがあります。ただし、全ての矯正歯科治療が対象になるわけではなく、治療の目的や状況によって適用条件が異なるため、事前に把握しておくことが重要です。
この記事では、矯正歯科治療の医療費控除について解説します。 矯正歯科治療を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ブライフ矯正歯科 院長
平塚 泰三(ひらつか たいぞう)
東京医科歯科大学歯学部歯学科を卒業後、1年間の研修医を経て東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面矯正学分野に入局。大学院を修了し歯学博士を取得。関東を中心に複数の歯科医院にて矯正担当医として勤務。2021年11月に静岡県静岡市にてブライフ矯正歯科を開業。正しい矯正歯科治療を適正な治療費で提供するように努めている。日本矯正歯科学会認定医。
矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費(自由)診療です。
一般的な治療期間:2年から3年、一般的な通院回数:20回~30回
矯正歯科治療の一般的なリスクと副作用:痛み ・口腔内不潔域の拡大と自浄作用の低下・歯根への影響(歯根の短小、歯の失活、歯肉退縮、歯根露出、失活歯の歯根破折)・顎関節症状・後戻り·加齢による変化・骨癒着
医療費控除とは税金の一部が戻ってくる制度
医療費控除は、高額の医療費を支払わなければならない場合に、所得税の還付や減税が受けられる制度です。
言い換えると、医療費で支払ったお金の一部が戻ってくるシステムです。
矯正歯科治療の費用そのものが安くなるわけではありませんが、家計にかかる負担を減らせます。
矯正歯科治療の費用をできるだけ安く抑えるために、医療費控除の対象になっているか調べて申請することが大切です。
矯正歯科治療で医療費控除の対象になるケース
「矯正は医療費控除の対象になるの?」「そもそも自分は医療費控除の対象になるの?」など、気になっている方もいるのではないでしょうか。
医療費控除の申請をするには、下記の条件に当てはまっている必要があります。
・年間の医療費が10万円を超えるケース
・機能改善のための治療を受けたケース
・子どもの治療のケース
それぞれのケースについて解説します。
年間の医療費が10万円を超えるケース
一年間でかかった医療費の合計が10万円以上になった場合、医療費控除の申請ができます。
この10万円の金額は、家族全員の医療費の合計金額です。
たとえば、以下のようなケースが考えられます。
・子どもが眼科や皮膚科、小児科などにかかり合計5万円
・母親が内科や産婦人科にかかり合計7万円
・父親が内科にかかり1万円
この場合、家族全員が一年でかかった治療費の合計金額は13万円なので、医療費控除の条件をクリアしています。
一方、矯正歯科治療の費用は、一般的に30~80万円ほどかかるといわれています。
たとえ部分矯正という最も簡単な症例であっても10万円以上の費用が発生するケースが多いです。
矯正歯科治療の費用は医療費控除の対象となる可能性が高いので、詳しく確認して控除の申請を検討することをおすすめします。
機能改善のための治療を受けたケース
機能改善のために矯正歯科治療をする場合、医療費控除の対象になります。
「機能改善のための治療とは何だろう?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、これは口腔内や全身の健康を守るために必要な治療を指します。
たとえば、失った歯にインプラントやブリッジ、入れ歯などを入れて再び噛めるようにしたり、虫歯を治療したりすることです。
矯正歯科治療も同様に、歯並びを整えることで以下のような健康改善効果が期待できます。
・虫歯や歯周病リスクの軽減
・発音の向上
・噛み合わせの改善
こうした治療は、健康維持や機能回復を目的としているため、医療費控除の対象として認められることが多いです。
多くの場合、この機能改善が治療目的の一つでもあるため、条件が満たされていると言えます。
ただし、「見た目を良くしたい」といった審美性を追求する目的だけの治療は、医療費控除の対象にはならないため注意が必要です。
子どもの治療のケース
子どもの矯正歯科治療は、口腔内の健全な成長をサポートするという重要な役割を担っています。
そのため、医療費控除の対象となる可能性が高いです。
子どもの矯正では、歯並びを整えるだけでなく、口周りの筋肉を鍛えることや顎の成長を正しい方向に導くことが重要視されます。
また、舌の使い方や唇の癖といった歯並びに影響を与える悪習慣を改善することも治療の一環です。
子どものうちに口腔内が健全に成長すれば、歯が生えるためのスペースを十分に確保できるため、将来的に歯がきれいに並びやすくなります。
その結果、抜歯や外科手術をしなくても歯並びを整えられる可能性が高まります。
このように、子どもの矯正歯科治療は不適切な成長による悪影響を防ぎ、健全な発達を促すことを目的としているため、治療とみなされ医療費控除の対象となることが多いです。
医療費控除の対象となる費用とは?
医療費控除を受けるためには、領収書を集めたり、正しい金額を記録したりする必要があります。
確定申告の準備をするにあたって「矯正歯科治療のためにかかった費用のうち、どこまで申請できるのだろう」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
結論として、基本的に治療に関わる出費はほとんど全て医療費として含めることが可能です。
どの範囲まで申請できるのか知らないまま申請すると、損をする可能性もあります。
矯正歯科治療の出費を抑えるためにも、正しい情報を知っておくことが大切です。
医療費控除の対象となる費用
医療費控除を申請するときに含めることができる費用は、以下の通りです。
・カウンセリング料
・検査料金
・調整料金(通院の度に発生する費用)
・矯正歯科治療そのものにかかる費用(マウスピース装置やワイヤー装置の費用)
・リテーナー装置の費用
・抜歯や外科手術の費用
・薬代
・交通費
このように、矯正歯科治療のために発生したものはほとんどが対象になります。
子どもの矯正の場合、保護者が付き添いとして一緒に通院する可能性が高いですが、公共機関で通院する場合は、付き添いにかかった費用も申請できます。
しっかりと申請するためにも、通院にかかった費用だけでなく、交通費の詳細をしっかりとメモしておきましょう。
また、デンタルローンやクレジットカードで支払いをした場合でも申請は可能です。
医療費控除の対象とならない費用
矯正歯科治療に発生したほとんどのものが対象になるとはいえ、全ての費用を申請できるわけではありません。
たとえば、下記の出費は対象になりません。
・デンタルローンやリボ払いの金利
・ガソリン代
・駐車料金
・タクシー代
・予防のための薬代
・ホワイトニング代
・診断書発行に支払った費用
デンタルローンやクレジットカードを利用して歯科治療費を支払った場合、その金額自体は医療費控除の対象になりますが、支払い時に発生する金利や手数料は対象外です。
また、通院時にかかる車のガソリン代や駐車料金も控除の対象外となります。
さらに、公共交通機関が利用可能な場合にタクシーを使用して通院した際のタクシー代も申請できません。
ただし、公共交通機関が利用できない場合に限り、タクシー代は対象になる場合があります。
矯正歯科治療を受ける方のなかには、治療中や治療後にホワイトニングを希望する方もいるかもしれません。
しかし、ホワイトニングにかかる費用は美容目的とみなされるため、医療費控除の対象外となります。
これらのポイントを押さえて、申請時に誤りがないよう注意してください。
医療費控除で戻ってくる金額の計算方法
金額を計算するためには、総所得金額や矯正歯科治療で支払った医療費のうち、対象となる金額を正確に把握しておきましょう。
また、生命保険や健康保険から支給された給付金がある場合、その内容と金額も確認することが重要です。
方法は、医療費控除額の計算と還付金の計算の2つのステップに分かれます。
それぞれ詳しく解説します。
医療費控除額の計算方法
国務庁のホームページによると、医療費控除の計算方法は、総所得金額が200万円以上と200万円未満の場合でそれぞれ異なります。
ちなみに、総所得金額とは収入にその他の所得(利子所得、不動産所得、配当所得など)を加え控除を差し引いた後の金額のことです。
特にフリーランスや自営業で仕事をしている方、副収入がある方は要注意です。
では、国務庁のホームページに載せられている計算方法を見ていきましょう。
総所得金額が200万円以上の場合
総所得の金額が200万円以上のケースの医療費控除の計算方法は、以下の通りです。
実際に支払った医療費の合計−保険金などで補てんされる金額−10万円
矯正歯科治療で支払った金額だけでなく、眼科や内科などほかの病院で治療した場合も忘れずに金額に含めまる必要があります。
また、申告する本人だけでなく、家族の医療費の内容も含めます。
補てんされる金額とは、生命保険や社会保険、損害保険などから受けられる給付金のことです。
そのなかには、出産手当金や育児手当金、痛傷手当金など含めなくて良いものもあるので、まずはしっかりと確認しましょう。
総所得金額が200万円未満の場合
総所得金額が200万円未満の場合の医療費控除は、下記の通り計算します。
実際に支払った医療費の合計金額−補てんされる金額−(総所得金額等の5%)
所得が200万円を超える場合と200万円未満の違いは、差し引く金額です。
還付金の計算方法
還付金とは、実際に返ってくる金額のことで、医療費控除額が分かった後に計算できます。
計算方法は、次の通りです。
医療費控除額×所得税率
所得税率は、所得金額別に決められています。
下記の表は国税庁のホームページに記載されている所得税率です。
自分の所得に従って所得税率を計算し、還付される金額を導き出します。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円〜329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円〜649万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円〜899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円〜1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円〜3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
引用元:国税庁「所得税の税率」
医療費控除の手続き方法
医療費控除の手続きは確定申告で行います。
通常、確定申告が不要なケースが多いですが、医療費控除といった特別な控除を受けたい場合は、自分で申告を行う必要があります。
毎年2〜3月に行われるため、忘れないように必要な書類を準備して申請を行いましょう。
医療費控除を申請する際に必要な書類
医療費控除を申請するためには、下記の書類が必要です。
・源泉徴収票
・歯科医師による診断書か治療計画書
・認印
・マイナンバーカード(もしくは通知カードと本人確認書類)
・医療費の領収書
・交通費などの領収書
源泉徴収票は、働いている会社から発行される書類です。
12月の年末調整時に会社へ申し出て、受け取る必要があります。
フリーランスの場合も、契約している会社に発行を依頼できるので、事前に確認してください。
また、医療費控除を申請するには、治療の証明として歯科医師の診断書や治療計画書が必要です。
診断書には、矯正歯科治療が「噛み合わせの調整」や「虫歯・歯周病予防」を目的とする治療であることを明記してもらうよう依頼します。
確定申告書の作成にはマイナンバーが必要となるため、マイナンバーカードや番号通知書も準備しておきます。
また、医療費控除には医療費や通院交通費の領収書が不可欠です。
領収書は発行してもらい、紛失しないように大切に保管しておきましょう。
手続きの手順
必要な書類を準備したら、確定申告の手続きを行います。
手続きのステップは、下記の通りです。
1.確定申告を作成する
2.作成した確定申告書を提出する
3.還付金を受け取る
確定申告の書類作成は、インターネットを利用する方法と手書きで行う方法の2つがあります。
インターネットで作成する場合は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」へアクセスし、画面の指示に従って必要事項を入力すれば書類を作成できます。
完成した書類はそのままオンラインで提出することも可能です。
手書きで作成する場合は、必要な書類を国税庁のホームページからダウンロードして印刷するか、最寄りの税務署で入手してください。
記入が完了した書類は、郵送または税務署に直接持参して提出できます。
提出方法はインターネットや郵送、または税務署へ直接持ち込む方法のいずれかから選べます。
確定申告が受理されると、数週間後に還付金が指定した口座に振り込まれるので、振込先の確認を忘れないようにしましょう。
確定申告の提出期間は毎年2月中旬から3月中旬までです。
特に会社員の方は、年末調整の時期とは異なるため、スケジュールを確認し忘れないよう注意してください。
矯正歯科医治療の医療費控除の申請をする前に知っておきたいポイント
医療費控除を申請するうえで知っておくべき注意点がいくつかあります。
確定申告書の作成をスムーズに進めるためにも、以下の3つのポイントを確認しておきましょう。
診断書がなくても医療費控除は受けられる
診断書が手元にない場合でも、医療費控除を申請することは可能です。
治療をすでに始めている場合や、確定申告の期限が迫っている状況では、「診断書がない」と焦ることもあるかもしれません。
しかし、診断書がなくても申請そのものは問題なく行えます。
ただし、矯正歯科治療は高額な費用がかかるため、場合によっては担当者から診断書の提出を求められることもあります。
この場合、矯正歯科治療中であっても、歯科医師に依頼すれば診断書を作成してもらうことが可能です。
申請時に診断書がなくても、焦らずに申告を進めてください。
必要に応じて、後から診断書を補足すれば問題ありません。
分割払いでも控除の対象になる
デンタルローンやクレジットカード払いなどで分割払いで治療費を支払っている場合でも、医療費控除の対象になります。
その際は、その年に支払った治療費のみを申告できます。
ただし、デンタルローンやクレジットカードの利子は申請できないため、注意が必要です。
5年以内であれば医療費控除を受けることができる
医療費控除は、過去5年以内であればさかのぼって申告できます。
なかには、「確定申告を忘れていた」「医療費控除を受けられることを知らなかった」などの理由で、申告していないこともあるのではないでしょうか。
その場合も安心してください。
5年以内であれば、医療費控除を受けられるので、次の年の確定申告の際に行えば問題ありません。
医療費控除を活用して費用負担を抑えよう!
今回は、医療費控除の条件や申請方法について解説しました。
医療費控除を活用することで、矯正歯科治療にかかる費用の負担を減らせます。
高額な費用がかかる矯正歯科治療だからこそ、控除制度をしっかり活用して治療を進めることが大切です。
申請には通院時の領収書が必要不可欠です。
治療費を支払った際には、必ず領収書を発行してもらい、紛失しないようきちんと保管しておきましょう。
「ブライフ矯正歯科」では、患者一人ひとりのライフスタイルや歯並びに合わせた治療計画を提案し、悩みに寄り添ったサポートをしています。
費用面でも明確で分かりやすい説明を心がけ、確定申告に必要な情報をスムーズに準備できる体制を整えています。
歯並びや噛み合わせにお悩みの方は、ぜひカウンセリングをご利用ください。
最適な治療方法をご提案するとともに、医療費控除の活用についてもわかりやすくご案内します。