マウスピース矯正できない7つの症例を解説！ほかの矯正方法は何がある？

目立たず矯正歯科治療ができることから、近年マウスピース矯正の人気が高まっています。

しかし、マウスピース矯正による歯の動かし方にはワイヤー矯正と違った特徴があり、どのような歯並びでも対応できるわけではありません。

この記事では、マウスピース矯正が適応できないケースと、その代替策について詳しく解説します。

矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費（自由）診療です。
一般的な治療期間：2年から3年、一般的な通院回数：20回～30回
矯正歯科治療の一般的なリスクと副作用：痛み ・口腔内不潔域の拡大と自浄作用の低下・歯根への影響（歯根の短小、歯の失活、歯肉退縮、歯根露出、失活歯の歯根破折）・顎関節症状・後戻り·加齢による変化・骨癒着

マウスピース矯正は全てのケースで適応できるわけではない

結論として、「マウスピース矯正をしたい」と思って矯正歯科に相談しても、実際にはできるケースとできないケースがあります。

以下では、マウスピース矯正の特性をもとに、なぜ適応できないケースがあるのかを解説します。

理由①マウスピース矯正は歯の動かし方が独特だから

マウスピース矯正は、少しずつ形を変えた複数枚のマウスピースを7〜10日ごとに交換することで段階的に歯を動かす仕組みです。

使用するマウスピースの総数は平均で40〜50枚にも及び、1枚のマウスピースで動かせるのは約0.25mmとごくわずかです。

マウスピース矯正は、歯の頭の部分を傾けてゆっくりと動かしていく「傾斜移動」を得意としています。

歯の傾きを整えるだけで改善が見込める軽度〜中度のガタつきのある歯並びに適した治療法です。

一方、ワイヤー矯正が得意な動きは、歯を根っこごと平行移動させる「歯体移動」です。

抜歯を伴うような歯を大きく動かす必要のある歯並びの場合は、ワイヤー矯正のほうが適している場合があります。

このような歯の動かし方の違いから、マウスピース矯正では難しい症例があるのです。

理由②歯科歯科によって適応範囲が異なるから

マウスピース矯正は治療開始から完了までの歯の動きをシミュレーションし、患者さんそれぞれに合わせて歯科医師が細かく設計します。（※インビザラインの場合）

この設計には、高度な技術と経験が求められるため、同じ歯並びの症例でも歯科医師によって対応の可否が異なります。

また、矯正歯科により取り扱うマウスピースの種類はさまざまですが、抜歯を伴う症例や難症例にも対応できるのは現在のところインビザラインのみだと考えています。

そのため、当院ではマウスピース矯正はインビザラインのみの取り扱いとなっています。

自分の歯並びに対応できる歯科医院を選ぶことが、マウスピース矯正治療の可能性を広げるポイントとなります。

理由③本人の努力が必要な治療法だから

マウスピース矯正は、1日20時間以上の装着と５〜10日ごとのマウスピース交換を自分で管理しながら行う治療法です。

食事中は装置を外して普段通りに食事を楽しめますが、その後はマウスピースと口腔内を清潔にしてすみやかに再装着する必要があります。

どれだけに優れた設計のマウスピースを使用しても、装着時間が足りないと十分な矯正効果が得られません。

マウスピース矯正は、歯科医師と共に進める治療ですが、最終的に治療を成功させるには患者様ご本人の努力が必要不可欠です。

マウスピース矯正ができない7つのケース

マウスピース矯正ができないケースとして、以下の7つがあります。

• 重度の歯周病がある
• インプラントが複数本入っている
• 骨格に原因がある出っ歯
• 骨格に原因がある受け口
• 重度の叢生がある
• 親知らず以外の埋伏歯がある
• ライフスタイルや職業柄マウスピースの長時間装着が難しい

順番に詳しく解説します。

重度の歯周病がある

重度の歯周病とは、歯肉の腫れや出血に加え、歯が揺れてしっかり噛むことができない状態をいいます。

重度の歯周病では、歯を支える骨が溶けてしまっているため、矯正力を加えることで歯が抜け落ちてしまうリスクがあります。

矯正歯科治療では、骨の吸収と再生を繰り返しながら歯を動かしますが、重度の歯周病ではこのサイクルが正常に起こりません。

軽度や中度の歯周病の場合でも、歯周病の状態が改善してから矯正歯科治療を始めることが一般的です。

インプラントが複数本入っている

インプラントは、人工の歯根を顎の骨に埋め込んで骨と結合させるため、動かすことができません。

ただし、インプラント以外の歯を移動させることで歯並びが整う場合や、インプラントが歯の移動を妨げない部位にある場合はマウスピース矯正が可能です。

たとえば、奥歯にインプラントがあり、前歯のみの部分矯正を行う場合は問題なく治療を進められます。

骨格に原因がある出っ歯

歯だけでなく上顎の骨ごと前に出ている、または下顎が小さく下顎の位置が後方にある場合、骨格に原因があると考えられます。

骨格に問題がある重度の出っ歯は矯正歯科治療だけで治すことが難しく、成人の場合は外科手術を併用する必要があります。

一方、骨格に問題がなく前歯の傾きによって出っ歯になっている場合は、歯の移動のみで対応できるため、マウスピース矯正での治療が可能です。

骨格に原因がある受け口

受け口とは、下の歯が上の歯より前にでている状態で、反対咬合とも呼ばれます。

下顎が大きく突き出た受け口は骨格の異常が原因で、マウスピース矯正では治せず外科手術が必要です。

ただし、受け口の症状が軽度であったり、原因が歯の向きや生え方にある場合は、マウスピース矯正で治療できます。

重度の叢生（そうせい）がある

叢生とは、歯が重なり合ってガタガタしている状態の歯並びで、乱ぐい歯とも呼ばれます。

一般的に八重歯と呼ばれる歯並びも叢生の一種です。

叢生の状態によっては歯を大きく移動させる必要があるため、マウスピース矯正だけでは十分な結果が得られない可能性があります。

ただし、叢生に対するマウスピース矯正の適用範囲は以前に比べ広がっており、経験豊富な歯科医師であれば重度の叢生にも対応できる場合があります。

当院においては重度の叢生の症例でも問題なく対応させていただいております。

親知らず以外の埋伏歯（まいふくし）がある

埋伏歯とは、歯肉や骨の中に埋まったままの歯のことで、歯の生えるスペース不足が原因の一つです。

埋伏歯は、引っ張り出して正しく並べる治療が必要になる場合がありますが、この治療はワイヤー矯正で行うのが一般的です。

一方で、上の前歯部分に過剰歯として埋まっている場合や、親知らずに見られる埋伏歯については、基本的に抜歯が選択されるため、歯を牽引する治療は不要です。

ライフスタイルや職業柄マウスピースの長時間装着が難しい

1日20時間の装着が約束できない方やマウスピースを頻繁に外す必要がある方は、マウスピース矯正の効果が期待できません。

食事中はマウスピースを外し、歯磨き後にまた装着しなければならないため、以下のような方は付け外しのわずらわしさを感じてしまうでしょう。

• 頻繁に味見が必要な飲食関係の職業の方
• 長時間の外食が多い方
• 喫煙習慣がある方

マウスピースの管理に苦痛を感じる方には、装置を付けっぱなしにできるワイヤー矯正がおすすめです。

マウスピース矯正できない場合の代替案

マウスピース矯正ができないと判断された場合でも、以下のような代替案があります。

• ワイヤー矯正
• ハイブリッド矯正（マウスピース矯正＋ワイヤー矯正）
• 外科的矯正治療

それぞれの特徴を説明します。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、マウスピース矯正に比べて幅広い症例に対応可能です。

歯を大きく移動させる必要がある重度の叢生など、複雑な歯並びや噛み合わせにも対応できます。

デメリットとして挙げられる見た目の問題は、できるだけ目立たせずに治療するワイヤー矯正を選ぶことで緩和できます。

表側矯正

表側矯正は歯の表側にブラケットと呼ばれるボタンを接着して、そこに通したワイヤーを引っ張りながら歯を動かす広く知られている治療方法です。

金属色のブラケットとワイヤーを白いブラケットとワイヤーに変更することで、装置を目立たせずに治療することができます。

至近距離の会話では装置が見えることがありますが、1メートルほど離れた距離ではほとんど分からないことが多いです。

裏側矯正

裏側矯正は、通常歯の表側につけるブラケットとワイヤーを裏側につけるため、装置が外からは見えません。

気づかれず治療ができるのが大きなメリットですが、専門性の高い技術が必要なため、治療できる歯科医師が限られており、治療費も高い傾向にあります。

一般的な費用相場は、表側矯正の1.5倍ほどです。

ハーフリンガル矯正

ハーフリンガル矯正は、上の歯は裏側、下の歯は表側に装置をつける治療法です。

目立ちやすい上の歯のみ裏側に装置をつけることで、見た目のデメリットを軽減しつつ裏側矯正より費用を抑えることができます。

費用相場は、表側矯正と裏側矯正のちょうど中間ほどになります。

ハイブリッド矯正（マウスピース矯正＋ワイヤー矯正）

ハイブリッド矯正とは、ワイヤー矯正とマウスピース矯正を組み合わせた治療方法で、それぞれの欠点を補いながら効率よく歯並びを治せます。

抜歯後の隙間を埋める場合など、歯を大きく動かす必要がある症例では、まずワイヤー矯正で歯を動かし、その後マウスピース矯正で微調整する方法が効果的です。

ただし、ハイブリッド矯正ができるのは、ワイヤー、マウスピース両治療に対応している歯科医院に限られ、追加費用がかかる場合もあるので事前に確認が必要です。

外科的矯正治療

外科的矯正治療とは、矯正歯科治療と外科手術を併用する方法で、骨格のずれが著しく強い受け口や出っ歯などに適応されます。

治療のスケジュールは、約1年間の術前矯正ののちに外科手術を行い、その後約1年間の術後矯正を行う流れが一般的です。

「顎変形症」と診断されると健康保険が適用になり、自由診療で行う矯正歯科治療や美容外科での手術に比べて費用を抑えられます。

ただし、保険を適用させるには、術前と術後の矯正歯科治療をワイヤー矯正で行う必要があります。

「マウスピース矯正できる？できない？」よくある質問

最後に、マウスピース矯正の対応可否についてのよくある質問にお答えします。

マウスピース矯正ができない年齢はある？

マウスピース矯正は、永久歯が生えそろっていて歯と顎の状態が良好であれば何歳でも始められます。

目立たずに治療でき、社会生活に支障が少ないことから大人になってから始める方も多いです。

近年では、乳歯が混じる時期専用のマウスピース矯正も開発されており、こちらは７歳ころのお子さまから対応できます。

詰め物や被せ物があってもマウスピース矯正はできる？

マウスピース矯正は、詰め物や被せ物があってもマウスピースを上から覆って装着するので問題ありません。

ただし、複数の歯がつながったブリッジは、個々の歯を動かせなくなるため、ブリッジを外してから治療を行う場合があります。

また、マウスピース矯正中に虫歯になり大きな被せ物を入れると、マウスピースが合わなくなり再作成が必要となります。

虫歯は矯正治療前に治し、治療中は徹底的な虫歯予防管理が必要です。

マウスピースの部分矯正ができるのはどんな歯並び？

部分矯正は、前提として「奥歯の噛み合わせに問題がない」場合にのみ行えます。

そのうえで、以下のような歯並びであれば改善が可能です。

• 前歯の傾きが原因の軽度の出っ歯
• 前歯のすきっ歯
• 前歯に軽度なガタつきがある歯並び
• 前歯1〜2本に傾きがある歯並び

前歯だけのマウスピース矯正はできる？

マウスピース矯正で前歯のみを治すことはできますが、装着するマウスピースは奥歯まで覆う形になります。

前歯だけのマウスピース矯正は部分矯正とも呼ばれ、全体矯正に比べ短期間で費用を抑えて治療できるメリットがあります。

前歯数本のごく軽度な歯並びの乱れには、効果的な治療法です。

歯が1本足りない・生えていない場合でもマウスピース矯正できる？

歯が足りない場合のマウスピース矯正は、以下の2パターンの方法で対応可能です。

• 周囲の歯を移動させて歯のない空隙部分を閉じる
• 歯を並べながらブリッジやインプラントで開いた空隙を補う

どちらの場合も治療終了までの詳細なシミュレーションを作成し、被せ物を入れるタイミングなど精密な治療計画を立てる必要があります。

八重歯でもマウスピース矯正できる？

八重歯は、マウスピース矯正で治すことが可能です。

ただし、八重歯以外の歯で噛み合わせや歯並びに大きなずれがあったり、骨格に問題があるような症例では対応できない場合もあります。

また、八重歯を歯列に入れるためのスペース確保が難しい場合には、一般的に前から4番目の歯を抜歯してから矯正歯科治療に入ります。

八重歯（犬歯）は、最も根が長く頑丈な歯で、奥歯を守る重要な役割もあるため、基本的には八重歯の抜歯は行いません。

マウスピース矯正が気になる方は矯正歯科でまず相談を

装置が目立たず取り外しもできる利便性に優れたマウスピース矯正ですが、歯並びや骨格の状態によっては対応できない場合もあります。

また、扱うマウスピースの種類や歯科医師の方針によっても適応範囲が異なるので、まずは矯正歯科で相談してみましょう。

静岡市にあるブライフ矯正歯科では、患者さまのご要望やライフスタイルを考慮し、一人ひとりに合わせた治療方法をご提案いたします。

マウスピース矯正を行う際には、治療のゴールまでのシミュレーションを事前にご覧いただき、納得したうえで始められるのでご安心ください。

なお、マウスピースはインビザラインを扱っており、個々の患者さまに最適なマウスピースをお作りするために細部まで丁寧に設計を行っています。

他院で「マウスピース矯正できない」といわれた方も、ぜひ一度ブライフ矯正歯科までご相談ください。