マウスピース矯正は、ワイヤー矯正に比べると痛みが少ない矯正歯科治療ですが、全く痛みが出ないわけではありません。
実際に、矯正中に痛みや違和感を覚える方もいます。
これからマウスピース矯正をしたいと検討している方のなかには、「マウスピース矯正はどれくらい痛いのだろう」「矯正中に痛みが出たらどうすれば良いの?」など、わからないことも多いのではないでしょうか。
この記事では、マウスピース矯正での痛みの程度や痛みが出やすいタイミング、痛みが出たときの対処法について解説します。
マウスピース矯正はどれくらい痛い?
マウスピース矯正は痛みが少ないので、「なるべく痛みの少ない矯正歯科治療をしたい」という方から特に支持されています。
しかし、「痛みがまったくない」というわけではありません。
ワイヤー矯正よりも痛みが出にくいものの、治療の過程で違和感や痛みを感じることがあります。
どれくらい痛むのかについては、個人の感じ方や歯並びの症状によって異なり、「ほとんど気にならない」と感じる方がいる一方で、「すごく痛い」「痛み止めの薬が欠かせない」と感じる方も少数ながらいます。
そうはいっても、我慢できないほどに痛みを感じる方はやはり少なく、一般的にマウスピース矯正の痛みを感じやすいのは、マウスピースを交換した日から数日間です。
交換日から2、3日で痛みのピークを迎え、1週間を目安に少しずつ痛みが収まるケースが多いでしょう。

ブライフ矯正歯科 院長
平塚 泰三(ひらつか たいぞう)
東京医科歯科大学歯学部歯学科を卒業後、1年間の研修医を経て東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面矯正学分野に入局。大学院を修了し歯学博士を取得。関東を中心に複数の歯科医院にて矯正担当医として勤務。2021年11月に静岡県静岡市にてブライフ矯正歯科を開業。正しい矯正歯科治療を適正な治療費で提供するように努めている。日本矯正歯科学会認定医。
矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費(自由)診療です。
一般的な治療期間:2年から3年、一般的な通院回数:20回~30回
矯正歯科治療の一般的なリスクと副作用:痛み ・口腔内不潔域の拡大と自浄作用の低下・歯根への影響(歯根の短小、歯の失活、歯肉退縮、歯根露出、失活歯の歯根破折)・顎関節症状・後戻り·加齢による変化・骨癒着
マウスピース矯正で痛みが出る理由とは?
マウスピース矯正中に痛みを感じる場合、以下のような理由が挙げられます。
- 歯が動いている
- マウスピースの縁が当たっている
- 歯周組織が敏感になっている
それぞれ詳しく解説します。
歯が動いている
マウスピースを1日20時間以上装着し、歯に圧力をかけて動かすのがマウスピース矯正です。
歯に継続的に圧力をかけることで、歯の周りにある骨が吸収され少しずつ歯が動きますが、骨が吸収される過程で痛みが生じることもあります。
特にマウスピースを交換した直後は、実際の歯とマウスピースとの位置にギャップがあり、歯にかかる圧力が大きくなります。
そのため、より圧力がかかり歯に痛みを感じやすいです。
ただし、一般的に痛みは徐々に和らぎます。
この痛みは治療過程の一部であり、治療計画通りに歯が動いている証拠ともいえるでしょう。
マウスピースの縁が当たっている
マウスピースの縁が、舌や歯茎、頬の粘膜などに当たり、マウスピースが擦れて痛みを感じることがあります。
マウスピースはプラスチックでできており、歯に合わせて作られますが、時には、縁が尖ったような形になったり、口腔内の粘膜に必要以上に当たったりすることもあるでしょう。
マウスピースは20時間以上という長い時間、装着しなければならないため、会話や笑う際のちょっとした動きをするだけでもストレスになる可能性も否定できません。
無理して使い続けると、傷ができて出血したり、口内炎になったりするリスクが伴います。
マウスピースの縁が当たっている場合は、我慢せずに歯科医院でマウスピースを調節してもらうことが大切です。
歯周組織が敏感になっている
矯正歯科治療中は歯周組織が敏感になっている時期なので、普段は全く問題ないちょっとした行動がきっかけで痛みを感じることがあります。
たとえば、歯根の周りには歯根膜という膜があり、食べ物を噛んだときに刺激が骨にダイレクトに伝わらないためのクッションの役目を果たしています。
しかし、矯正歯科治療中は、マウスピースの圧力が継続的にかかるため、歯根膜が常に刺激を受けている状態です。
その影響で、食事中や力を入れたときなどに、歯を噛みしめたことがきっかけで鈍痛や激痛を覚えることも少なくありません。
マウスピースを外して食事をしている途中でも痛みを感じるケースがあるため「どうしてだろう」と不安になる方もいます。
歯科矯正期間中の口腔内は、マウスピースを外していても、敏感になっていることを頭に入れておきましょう。
マウスピース矯正の痛みが出やすいタイミング
マウスピース矯正の痛みが出やすいタイミングとして、以下があります。
- 新しいマウスピースに交換した直後
- 食事中と食後
- 長時間マウスピースを外していたとき
痛みが出る理由とともに、出やすいタイミングについても理解することが大切です。
3つの痛みが出やすいタイミングについて詳しく解説します。
新しいマウスピースに交換した直後
マウスピースを交換する時期は、痛みを感じやすいタイミングです。
マウスピース矯正では、マウスピースを交換した直後は、マウスピースの歯並び(理想的な位置へと誘導したい位置)と、実際の歯の位置がずれています。
そのため、マウスピースが常に歯や歯茎、歯根膜、骨などに圧力をかけている状態となり、いつも以上に敏感になっています。
一般的に痛みの程度はそれほどひどくなく、ピーク時も痛み止めを飲むと静まることが多いです。
ただし、まれに痛み止めも効かないほどの強い痛みに襲われたり、痛みが治らなかったりすることがあります。
その際は矯正歯科に相談する必要があります。
治療の進み具合や症例によって個人差がありますが、マウスピースは1〜2週間に1度のペースで交換するので、痛みが出やすい時期を考慮して仕事や私生活のスケジュールを組みましょう。
食事中・食後
食事中や食後にも痛みを感じることがあります。
マウスピースを外している間も、歯根膜や歯茎、骨などの歯周組織は敏感な状態が続いており、噛む刺激によって痛みを感じやすくなるためです。
特に、新しいマウスピースを交換した直後の食事中には、痛みを感じやすいでしょう。
また、硬いものや繊維質のものを噛んだときや、何かにかぶりついた瞬間に痛みが出ることもあります。
マウスピース矯正はワイヤー矯正に比べて痛みが少ないとはいえ、食事のメニューや食べ方に気を配ると、痛みを軽減しやすくなります。
長時間マウスピースを外していたとき
長時間マウスピースを外していると、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起こり、再び装着した際に痛みを感じやすくなります。
後戻りとは、歯が元の位置に戻ろうとして動くことです。
矯正歯科治療では、歯を理想的な位置へ移動させていますが、その状態が完全に定着するまでには時間がかかります。
そのため、正しい位置へと導くマウスピースの存在がなくなると、すぐに元の位置へと戻ろうと移動してしまうのです。
長時間マウスピースを外すことで後戻りが進むと、マウスピースの形と実際の歯の位置にずれが生じ、圧力がかかります。
その結果、新しいマウスピースに交換した直後と同じ、またはそれ以上の痛みを感じることもあります。
食事や歯磨きのとき以外は、マウスピースを外すのはなるべく避けたほうが良いでしょう。
マウスピース矯正が痛いときの対処法
マウスピース矯正中に痛みを感じたとしても、大抵の場合は自宅で対処できます。
具体的な対処法は、以下のとおりです。
- 痛み止めを飲む
- 硬い食べ物を控える
- 矯正歯科で調整してもらう
- 1つ前のマウスピースを装着する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
痛み止めを飲む
痛みを感じたときは、痛み止めを飲むことで一時的に痛みを和らげることができます。
特に、マウスピースを交換した直後に生じる痛みは比較的軽度であり、多くの場合、痛み止めを服用することで落ち着きます。
痛み止めは、矯正歯科で処方してもらうことができますが、市販のものでも問題ありません。
ただし、規定以上の痛み止めの薬を飲まないことや、必要以上に薬を飲み続けないことなどにも注意が必要です。
薬の選び方や服用のタイミングに不安がある場合は、歯科医師に相談しながら適切に決めるようにしましょう。
硬い食べ物を控える
鈍痛を感じているときは、硬い食べ物を避けるのが安心です。
硬い食べ物を咀嚼すると、すでに敏感になっている歯周組織がさらに敏感な状態になるため、激痛を感じたり、痛みが長引いたりする可能性があります。
また、特に違和感を覚えていない場合でも、マウスピースを交換した直後は食事のメニューに注意を払いましょう。
たとえば、肉類や繊維の多い野菜はしっかりと噛んで食べる必要のある食材です。
今まで痛みを感じなかった場合でも、咀嚼したことが刺激となって痛みを発症することも考えられます。
さらに、あまり硬くない食べ物でも、ハンバーガーなど噛みついて食べるメニューは噛みついた瞬間に痛みを感じることもあります。
マウスピース矯正中は、以下のような食べ物がおすすめです。
- うどん
- ポタージュ
- ゼリー
- 豆腐
- 魚
- ひき肉
柔らかい食べ物を選ぶことで、痛みを感じることが少なくなります。
矯正歯科で調整してもらう
マウスピースの縁が当たっている場合は、矯正歯科で調整してもらいましょう。
歯が治療計画通りに動いていることが原因で痛みを感じる場合、痛み止めを飲んだり、食べ物に気をつけたりして対処できます。
しかし、マウスピースの縁が当たっている場合は、装置を調整しない限り痛みが続きます。
粘膜を傷つけて口内炎や出血でさらに痛みが出るのを防ぐためにも、できるだけ早く矯正歯科に連絡することをおすすめします。
1つ前のマウスピースを装着する
マウスピースの縁が口腔内に当たっていることで痛みが出ている場合、矯正歯科に行くまでの期間中は1つ前のマウスピースを装着しましょう。
その際は電話などで予め1つ前の物を使用する旨を伝えるようにすると良いでしょう。
痛いからとマウスピースを外したままだと、後戻りして治療が延長したりマウスピースそのものを作り直したりするリスクが出てしまいます。
また、我慢して問題のあるマウスピースを使い続けるなら、傷がますます深くなります。
そこで、1つ前のマウスピースを装着して後戻りを防ぎましょう。
1つ前のマウスピースは、交換後すぐに捨てずにしばらく保管しておくことが大切です。
また、歯科医師から別の指示を受けた場合は、歯科医師の指示に従ってください。
マウスピース矯正が痛いときのNG行為
マウスピース矯正をしているときに痛みを感じると、「できるだけ早く問題を解決したい」と思うことでしょう。
しかし、痛みを抑えるために間違った対応をすると、治療に支障が出る可能性があります。
たとえば、下記のような行為は避けるべきです。
- マウスピースを外す
- 我慢して装着し続ける
- 勝手に削る
- 冷やしたり、温めたりする
それぞれ詳しく解説します。
マウスピースを外す
マウスピースが痛いからといって、外したままにするのはおすすめできません。
マウスピースを外したままにすると、後戻りするからです。
その結果、治療がスムーズにいかなくなり、マウスピースの作り直しが必要になったり、治療期間が伸びたりする可能性があります。
そうなると、治療期間も治療費もかかるので、マウスピースを外したまま何も装着しない状態でいるのはやめましょう。
我慢して装着し続ける
痛いのに我慢して装着し続けることも推奨できません。
我慢しすぎると、ストレスとなり、仕事や勉強などの生活に支障が出る可能性もあります。
そのような場合は、痛み止めの薬を飲んで対応しましょう。
ただし、繰り返し服用すると、胃腸に負担をかけたり、歯の移動が遅れたりするリスクもあるのでバランスが大切です。
また、マウスピースの形が原因で口腔粘膜を傷つけているケースでは、我慢せずにできるだけ早く矯正歯科で処置してもらうことが大切です。
勝手に削る
マウスピースを勝手に削るのはNG行為です。
マウスピースの縁が当たって痛みを感じたり、傷の原因になったりすると、気になる部分を削りたくなる方も少なくありません。
しかし、マウスピースははじめに行った精密検査をもとに綿密に計算して作られているため、勝手に削ると、歯の圧力の掛け方が微妙に変化するリスクが高くなります。
その結果、歯が治療計画通りに動かなかったり、全く違う方向へ動いたりする可能性もあり、治療の妨げになります。
マウスピースの調整が必要な場合は、矯正歯科で正しく処置をしてもらうことが大切です。
冷やしたり、温めたりする
痛みを緩和するために、冷やしたり、ホットタオルで温めたりしたくなる方もいます。
しかし、敏感になっている状態の患部を冷やしたり温めたりすると、余計な刺激を与えるきっかけとなります。
特に、歯が動いていることから来る痛みは炎症ではないので、冷やしたり温めたりしても効果はないでしょう。
冷やすことで血行が悪くなり歯の動きが鈍くなる一方で、温めることで血流が良くなり痛みが増すリスクが高まります。
不必要な刺激を避けるためにも、患部を冷やしたり温めたりする処置は避けてください。
マウスピース矯正の痛みに関するよくある質問
ここまでは、マウスピース矯正の痛み具合や痛む原因、痛むときの対策などについて解説してきました。
マウスピース矯正の痛みについて、一般的なことはイメージできたとはいえ、実際に不安が拭えないこともあるでしょう。
できるだけ不安な気持ちを取り除くためにも、マウスピース矯正に関するよくある質問について回答します。
マウスピース矯正とワイヤー矯正はどちらが痛い?
個人差はありますが、一般的にはワイヤー矯正のほうが痛いといわれています。
これは、1度の調整(もしくは交換)でマウスピース矯正とワイヤー矯正では歯を動かす距離が異なるからです。
マウスピース矯正では、1〜2週間ごとにマウスピースを交換しながら歯を動かしますが、その移動距離は最大で約0.25mm程度です。
一方、ワイヤー矯正では、1回の調整で0.5〜1mm程度動かすことが一般的です。
1回の調整で動かす距離が大きいほど、歯の位置と理想的な配置とのズレが生じやすくなり、そのズレを矯正するためにかかる圧力も強まります。
その結果、ワイヤー矯正のほうが痛みをより強く感じる傾向があります。
マウスピース矯正の痛みにはロキソニンを服用しても大丈夫?
マウスピース矯正で痛みを感じるときに、ロキソニンなどの市販の痛み止めを一時的に服用することは問題ありません。
痛みを抑えてストレスになり、日常生活に支障が出ることを考えると、服用したほうが良いこともあるからです。
ただし、痛み止めを継続的に服用し続けると、薬の効果が薄れる可能性があるため、我慢できる程度の痛みであれば極力控えることも大切です。
痛みのピーク時に、用法・用量を守って適切に使用するようにしましょう。
薬の使用に不安がある場合は、歯科医師に相談するのがおすすめです。
場合によっては、痛み止めを処方してもらえる場合もあります。
マウスピース矯正の痛みはいつまで続く?
マウスピース矯正の痛みは、新しいマウスピースに交換した後、2〜3日でピークを迎えるケースが一般的です。
この期間は特に痛みを感じがちですが、ピークを過ぎたあたりから痛みが徐々に薄れるため、気にならなくなることも多いでしょう。
痛みは通常、1週間ほどで治まることが多いです。
マウスピース矯正の初期は痛みが出るたびに「大丈夫だろうか?」と、不安に感じることもあるかもしれません。
しかし、治療が進むにつれて痛みのタイミングや強さに慣れ、ある程度予測しながら日常生活を送れるようになる人がほとんどです。
マウスピース矯正は比較的痛みが少ない!検討中の方はブライフ矯正歯科まで
マウスピース矯正はワイヤー矯正と比べて、比較的痛みが少ない矯正歯科治療です。
痛みを感じることもありますが、多くの場合、歯が順調に動いていることから生じる痛みです。
この場合、痛みのピークにあるときに痛み止めを服用したり、硬いものを避けたりすることで対処できます。
また、マウスピースの縁が口腔粘膜に当たっている場合は、口内炎や出血のリスクを避けるためにも早めに矯正歯科で調整してもらいましょう。
ブライフ矯正歯科では「痛みの少ない治療を受けたい」「痛いのが怖い」など、患者さま一人ひとりの気持ちに寄り添い矯正歯科治療を進めています。
矯正は痛いというイメージを拭いきれずに、矯正歯科治療を受けるのを躊躇していた患者さまにも「思った以上に痛みがなかった」「あまり痛みを感じなかった」と、満足して治療を受けていただいています。
痛みが不安で、矯正歯科治療を検討中の方や、マウスピース矯正に興味のある方はぜひカウンセリングにお越しください。
患者様の不安に寄り添い、納得のいく治療法を一緒に考えていきましょう。