矯正歯科治療後に歯並びが戻る原因とは？対策や再矯正する場合の費用も解説

矯正歯科治療後の整った歯並びを維持するためには、リテーナー（保定装置）を決められた期間装着することが大切です。

リテーナーが合わなくなったり、装着を怠ってしまったりすると、せっかく時間とお金をかけて矯正しても後戻りしてしまうケースも少なくありません。

実は歯並びの後戻りにはいくつかの原因があり、適切な対策を取ることで防ぐことが可能です。

また、軽度の後戻りであれば、費用を抑えて短期間で治すことができるケースもあります。

この記事では、歯並びが戻ってしまう原因や対策、再治療の際にかかる費用について詳しく解説します。

矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費（自由）診療です。
一般的な治療期間：2年から3年、一般的な通院回数：20回～30回
矯正歯科治療の一般的なリスクと副作用：痛み ・口腔内不潔域の拡大と自浄作用の低下・歯根への影響（歯根の短小、歯の失活、歯肉退縮、歯根露出、失活歯の歯根破折）・顎関節症状・後戻り·加齢による変化・骨癒着

矯正歯科治療後に歯並びが元の状態に近づいてしまう「後戻り」

「後戻り」とは、矯正歯科治療で整えた歯並びや噛み合わせにずれが生じ、時間の経過とともに治療前の状態に近づいてしまう現象のことです。

矯正歯科治療では、歯を支えている「歯槽骨（しそうこつ）」や、歯茎といった歯周組織の状態を変化させながら歯を動かしていきます。

歯茎の中には伸び縮みする歯周靱帯という繊維上の組織が豊富で、治療直後のまだ安定していない骨の中では元の位置に戻ろうと引っ張られる力が働きます。

そのため、何もせずに放っておくとしだいに後戻りをしてしまうのです。

矯正歯科治療では、治療後の歯並びを安定させるための「保定期間」が、治療中と同じくらい重要になります。

矯正歯科治療後に歯並びが後戻りしてしまう原因

矯正歯科治療後に歯並びが後戻りする原因は、以下のとおりです。

• 保定装置を使用する時間が足りない
• 噛み癖や舌の癖などが影響を及ぼしている
• 部分矯正をしていた
• 歯周病になった

それぞれ詳しく説明します。

保定装置を使用する時間が足りない

歯並びが後戻りしてしまう原因で多いのが、保定装置の装着を怠ってしまうことです。

歯周組織を新たに安定させ、治療後の歯並びを維持するには、保定装置の装着が欠かせません。

特に歯を動かした直後は、元に戻ろうとする力が強く働くので、数日装着を怠っただけでも後戻りしてしまいます。

「そろそろ装着時間を短くしてもいいだろう」と自己判断するのではなく、必ず指定された装着時間を守らなければいけません。

噛み癖や舌の癖などが影響を及ぼしている

噛み癖や舌の癖は歯に過度な力をかけてしまうため、矯正歯科治療中には、これらの癖を改善させる必要があります。

噛み癖や舌の癖とは次のようなものです。

• 舌で歯を押す癖
• 歯で舌や唇を噛む癖
• 飲み込むときに舌が前にでる癖
• 歯ぎしりや食いしばり

上記のような舌で歯を押す癖は、受け口や出っ歯、開咬といった不正咬合の原因になります。

また、歯ぎしりや食いしばりは、歯がすり減って噛み合わせが変わったり、歯が傾いたりするリスクがあります。

特に矯正歯科治療が終わったばかりの時期は、噛み癖や舌の癖の影響をより強く受けるため、原因となる癖をあらかじめ治しておくことが重要です。

部分矯正をしていた

部分矯正は、前歯数本のわずかな歯並びのずれを治すのに適した治療で、全体的な矯正に比べて期間やコストを抑えることができます。

しかし、本来ならば全体矯正で治すべき歯並びを部分矯正で治療した場合には、後戻りしやすい傾向にあります。

たとえば、重なりが多い八重歯や出っ歯、奥歯の噛み合わせのずれなどは、部分矯正で治すことができません。

手軽にできるイメージの部分矯正ですが、全体矯正と同様に歯科医師による正確な診断が必要です。

歯周病になった

歯周病は、細菌により歯肉や歯周組織が炎症を起こす病気で、進行すると歯を支える骨が減少してしまいます。

支えを失った歯は不安定な状態となるため動きやすく、後戻りの原因になってしまうのです。

特に、矯正歯科治療後の歯は動きやすいため、注意が必要です。

矯正歯科治療後に歯並びが戻るのを防ぐ3つの対策

矯正歯科治療が終わったあとからでもできる後戻りの予防対策を3つ紹介します。

• リテーナーを指示通りに装着する
• 噛み癖や舌癖を改善させる
• 歯周病ケアを徹底する

それぞれ詳しく解説します。

リテーナーを指示通りに装着する

矯正歯科治療後の後戻りを防ぐために大切なことの一つは、保定装置（リテーナー）を決められた時間を守って装着することです。

リテーナーには、マウスピースタイプやプレートタイプの取り外し式と、ワイヤーを歯に接着させるタイプの固定式があります。

取り外し式リテーナーの一般的な装着時間は、以下のとおりです。

固定式リテーナーは、歯の裏側に接着するのでつけ忘れの心配はありませんが、一部分の接着が取れて後戻りが進んでしまうことがあります。

そのため固定式のみで保定することはリスクが伴いますので、マウスピースを併用することがおすすめです。

少しでも違和感を感じたら、正しく接着されているかを矯正歯科で確認してもらうことが大切です。

リテーナーの装着期間は、歯を動かした期間と同じだけ必要であり、取り外し式、固定式どちらも2年程度とされています。

噛み癖や舌癖を改善させる

噛み癖や舌の癖を改善させる方法として、舌や口の周りの筋肉を整えるMFT（口腔筋機能療法）というトレーニングがあります。

MFTで行うトレーニングは次のようなものです。

• 正しい舌の位置を覚える
• 舌全体を上顎に吸い上げ、舌の筋肉を鍛える
• 舌を上顎の裏に置いたまま唇をしっかりと閉じ、唇の筋力を鍛える
• 口を開けたまま水を飲み込み、正しい嚥下を身につける

MFTは間違った方法では効果が得られないため、初めのうちは歯科医師や歯科衛生士の指導のもと行うことが大切です。

正しい方法を身につけ、自宅でもトレーニングを習慣化していきましょう。

歯ぎしりや食いしばりには、マウスピースタイプのリテーナーを使用して、歯や顎への衝撃を緩和させる方法がとられます。

歯周病ケアを徹底する

歯周病が進行すると、歯が動き出し後戻りが加速してしまうので、矯正歯科治療後は徹底的に歯周病ケアをする必要があります。

歯周病予防の基本は歯磨きやフロスでのケアですが、矯正歯科やかかりつけの歯科医院で定期的にチェックを受けることも欠かせないポイントです。

一度除去した歯周ポケット内の細菌数は、3か月後には元の値に戻ってしまうと言われています。

矯正歯科治療後のきれいな歯を維持するためにも、歯科医院での定期的なメインテナンスをおすすめします。

矯正歯科治療後に歯並びが戻ったら再矯正するべき？

再矯正するかどうかは、後戻りの状態や本人の希望によってさまざまです。

再矯正を検討する判断基準を解説します。

再矯正する判断基準

以下のチェック項目に一つでも当てはまるものがあれば、再矯正の検討をおすすめします。

• 歯並びが気になりストレスになっている
• リテーナーが全くはまらない
• 噛み合わせが合わない

再矯正を行う第一の基準は「自分が気になるか」で、多少の後戻りがあっても許容できるなら無理に行う必要はありません。

ただし、保定期間中にもかかわらずリテーナーがはまらない場合は、後戻りがさらに進んでしまうので早急に矯正歯科に連絡してください。

リテーナーの調整や再作成で今の歯並びを維持するのか、再矯正するべきなのか、歯科医師と相談して決めていきます。

また、噛み合わせが悪い状態を放置してしまうと、全身に悪影響が及ぶ可能性があるため、うまく噛めない場合も再矯正の検討が必要です。

後戻りの程度が軽度であるほど、再治療にかかる期間も費用も少なく済むので、早めに矯正歯科で相談することをおすすめします。

再矯正をするときの注意点

一度目の矯正歯科治療時に、以下の症状があった方は慎重な検討が必要です。

• 歯肉退縮（歯ぐきが下がり歯の根っこの部分が見えてしまっている状態）
• 歯根吸収（歯の根っこの部分が短くなってしまった状態）

歯肉退縮や歯根吸収は、矯正歯科治療の代表的なリスクであり、再矯正によってさらにリスクを負うこととなり症状が進む可能性があります。

そのため、レントゲンや口腔内検査などの十分な事前診査を行い、治療が可能かどうかの判断を歯科医師にしてもらう必要があります。

矯正歯科治療後に戻った歯並びの再矯正にかかる費用

再矯正にかかる費用は、一般的には後戻りの程度によって決まります。

以下では、程度別に費用の相場を解説します。

軽度の後戻りで部分矯正が可能な場合は25万円程度

部分矯正の費用は治す本数により10〜60万円程度と幅がありますが、平均すると25万円程度です。

部分矯正は、奥歯の噛み合わせには問題がなく、ずれた前歯だけを治したい場合に適応されます。

後戻りは下の前歯から起こりやすいので、前歯のずれが気になった時点で再矯正を始めれば、部分矯正で済むケースが多いです。

重度の後戻りで全体矯正が必要な場合は50万円〜初回と同程度

後戻りの程度が重度で、前歯だけでなく奥歯の噛み合わせの治療も必要な場合は、50万円以上かかる可能性があります。

前歯のずれだけのように見えていても、実際には、ずれの原因が奥歯の噛み合わせにあるケースも多くみられます。

後戻りの原因や程度によっては、初回と同程度の費用がかかることも覚えてきましょう。

たとえば、再矯正でも選ばれることが多いマウスピース矯正「インビザライン」での治療の目安は、以下の表のとおりです。

初回の矯正歯科治療時にインビザライン・コンプリヘンシブ（旧：インビザラインフル）を選択した場合は5年間の保証があります。

治療開始から5年以内であれば調整料のみで再治療可能な医院もあるので、まずは治療した歯科医院に問い合わせてみましょう。

費用を抑えるには初回と同じ矯正歯科で相談を

初回と同じ矯正歯科で再治療を行うと、費用が初回より安くなる傾向があります。

また、治療後の後戻り保証を設けている医院もあり、その場合は期間内であれば装置代がかかりません。

まずは治療した矯正歯科に相談し、金額など納得できないことがあれば別の矯正歯科でも相談することをおすすめします。

ただし、別の矯正歯科で再矯正を行う場合には、一からの検査・診断になり、一度目の治療と同程度の費用がかかることが考えられます。

費用の面での心配がある場合は、本来より低価格に設定された「再矯正プラン」を設けている矯正歯科を検討しましょう。

ブライフ矯正歯科では、矯正治療後も2年間の後戻り保証を設けています。

当院で矯正治療を受けた後、万が一歯並びが後戻りしてしまった場合でも、保証期間内であれば無償で再治療が可能です。

美しい歯並びを長く維持していただくためにしっかりとサポートしますので、ご安心ください。

矯正歯科治療後の後戻りに関するよくある質問

ここまで、後戻りの原因、再矯正の基準や費用について解説してきました。

最後に矯正歯科治療後の後戻りについてのよくある質問にお答えします。

矯正歯科治療後に後戻りする確率はどのくらい？

歯は元の位置に戻ろうとする性質があるため、治療後に保定装置を装着しないと確実に後戻りします。

歯並びは、加齢や食事中の噛みしめなど、生活の中で少しずつ変化していくものなので、完璧な状態を一生維持するのは困難です。

したがって、戻る確率でいうと100％といえますが、適切に保定することで見た目には分からないわずかな程度の戻りに抑えることは可能です。

リテーナーはいつまでつけ続けるの？

リテーナーは、歯を動かした期間と同期間の装着を基本とするので、最低2年程度はつける必要があります。

リテーナーをつけている期間が長ければ長いほど後戻り予防効果が高まるので、2年経過後も就寝時の装着を続けられるとより効果的です。

なかには生涯つけ続けるという方もいます。

リテーナーを1日でもさぼったら後戻りする？

治療終了直後は歯の定着が不安定で、リテーナーを1日さぼっただけでも後戻りすることがあります。

翌日、リテーナーを正しく装着できれば大きな問題はありませんが、痛みが強かったり、はまらなくなってしまった場合には、早急に歯科医院に連絡してください。

どうしてもさぼりがちになってしまう方は、固定式のリテーナーを併用するなど、長く続けられる方法を歯科医師と相談しましょう。

矯正歯科治療終了から10年たっても後戻りのリスクはある？

海外の調査では、固定式の保定装置を10年間装着していた方で、治療後の歯並びをキープできたのは33％というデータがあります。

矯正歯科治療の有無にかかわらず、年齢とともに歯や歯周組織は変化していくので、10年後の後戻りのリスクをゼロにするのは難しいです。

しかし、元の歯並びに完全に戻ってしまうことはほとんどなく、保定期間に正しくリテーナーを装着すれば、後戻りのリスクを最小限にできます。

矯正歯科治療後の後戻りは矯正歯科で相談しよう

後戻りの最大の原因は、治療後の保定不足であり、リテーナーを指示通りに正しく装着することは歯並びを維持するうえで大切です。

後戻りしてしまった場合でも、軽度のうちなら短期間でコストを抑えながら再矯正ができるので早めに矯正歯科で相談しましょう。

ブライフ矯正歯科では、後戻りしにくい治療計画を立てるのはもちろんのこと、患者さまのお悩みに寄り添った最適な治療プランをご提案しています。

また、治療後も定期的に通院していただいている患者さまでリテーナーを適切にご使用の方には、2年間の「後戻り保証」を設けております。

静岡市周辺にお住まいで歯並びにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。